【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「いえ……館長は女性の噂がないのでつい……」
正直にいった麻耶の言葉に、始はこれでもかと顔をしかめた。
「お前……そんな事を思っていたの?」
つい素が出たのであろう、心底嫌そうな顔をした始に慌てて麻耶は言葉を続けた。
「すみません!だって食事の世話をしたりとか……まるで……。あれ?館長は何を思っていたんですか?」
キョトンとして言った麻耶に、「もういいよ。アイツと疑われているとか思わない訳?」呟くように言うと、始は麻耶をじっと見た。

「きちんと面倒みてもらった?」
「面倒って……まあはい。迷惑ばかり掛けちゃった気がしますけど、昨日はずっとゆっくりしてました」
「何をしてたの?」
「えっと。DVD見たり、お昼寝したり。あっ、初めてピザデリバリーしたって言ってました。お金持ちってピザ食べないんですね~」
麻耶の言葉に、始は啞然としたような顔を麻耶に向けていた。

「館長??」
そんな顔の意味が解らないと言った感じで麻耶は、始に顔を向けた。
「ピザ……ね。仲良くやってそうで安心したよ。まあ俺も今忙しいし、アイツも忙しい。水崎さんアイツの事頼んだよ」
「え……私も忙しいですよ。それは認めてくれないんですか?」
「そこかよ……」
呟くように言った始は、
「お前も忙しいと思うけど、頼むな」
「はい!家政婦がんばります。でもどちらかと言うと、私がお世話してもらってる気もするんですけどね」
へへっと笑った麻耶に始はため息を落とすと、
「家政婦とかじゃなくて……」
会話にならないやり取りに、始は頭を抱えた。

(館長……私に何を求めていますか?もしも社長の心の支え……そういうことなら私には無理ですよ……)

「じゃあなんですか?」
時より見せる芳也の瞳を思い出して、麻耶はひっそりと心の中にまた溢れそうになる気持ちを押し込んで笑った。


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