【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
シャワーを浴びたばかりなのだろう、温かい身体と、乾かしてないのだろう髪から落ちた水滴が麻耶の首筋に落ちて、麻耶はビクリと肩を震わせた。
「麻耶?」
小声で呼ばれて、そっと麻耶は芳也の方を振り返った。
不安に揺れる麻耶の瞳を見て、芳也は
「どうした?なんでそんな顔してる?」
芳也はゆっくりと麻耶の髪を撫でると、笑顔を向けた。
疲労の色が濃く、疲れた顔をした芳也を見て麻耶は自分の不安な気持ちだけを一方的に押し付けて芳也の健康に気をつけなかった自分が、急に嫌になり「ごめんなさい」と呟いやいた。

「どうした?本当に」
久しぶりに感じる芳也の腕の中で、安心したのか麻耶の瞳から涙が零れた。

「芳也さん……好きな人できた?」
「……はあ?」
心底意味が解らないという表情を見せた芳也は麻耶をジッと見た。
「だって、こないだ綺麗な女の人とホテルに入るのを見ちゃって……それから毎日帰りも遅くて全然会えなくて」
そこまで言って、俯いた麻耶にようやく芳也は思い当たることが合ったのか、顔をしかめた。
「あの日……見ていたのか」
その言葉に、麻耶は芳也の肩を押すと、芳也の腕から逃れて反対を向いた。

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