【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「社長!今日からよろしくお願いします!お家賃と光熱費分きちんと尽くさせていただきます!」
ドンとキッチンに手をついて、真剣な顔で芳也を見る麻耶に、芳也もたじろいだ。
「俺はそんなこと……」
そう言いかけた芳也だったが、胸の前でギュッと握り拳を作りやる気を見せた麻耶に、ため息だけをついて自分の部屋へと入っていった。

そして、いつも通りの社長の芳也が現れると、麻耶はさっき以上にピシッとすると、ダイニングテーブルに朝食を並べ、ご飯をよそった。
「社長は日本茶ですか?」
「え?」
「だから、日本茶?ほうじ茶とか……」
お茶の種類の事かと芳也は、
「日本茶」
それだけ答えると、新聞を取りに行こうと玄関へ向かおうとした。

「あっ、新聞ですね!今すぐに!」
犬のように、パタパタと玄関へと走っていく麻耶を呆気に取られて見た後、芳也は笑いがこみ上げてきてクッと肩を揺らした。
「なんか犬みたいだぞ」
「え?」
新聞を持ってキョトンとする麻耶から新聞を受け取ると、芳也はダイニングテーブルに乗せられた料理に目を向けた。

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