甘いチョコとビターな彼
『ま、それじゃ仕方ないよな!』
『辰巳んとこのチョコは上手いからなぁー!』
『父親が作ってんだっけ?』
『そうそう!父さんが作るチョコはまじで上手くてさ。俺もいつかあんな味が出せるように、今から勉強しとかないと』
自分の家がチョコレート専門店だということは、この頃の俺には自慢でしかなかった。
そして、父さんは俺の1番の自慢だった。
父さんの作るチョコレートは、食べたら忘れられない味だった。
作業着を身にまとって真剣にチョコを作る父さんは、俺が今までに見た中で1番かっこいい人だった。
『んじゃ、今回は俺らだけでやるかー』
『辰巳はまた今度一緒にやろーな!』
『おう!』
いつか俺が、あんな風にチョコを作るんだ。
中学1年の俺は、そんなことしか考えていなかった。
だから周りからどう思われているかなんて知らなかったし、気づけなかった。