政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

わたしは将吾さんの顔を見上げる。

……そっちこそ、終わったあと、あんなに素っ気なかったじゃない?

わたしはこの雰囲気はヤバいと思ったので、話を逸らすことにした。

「不思議な香りね。ウッディ系なのに、今はバニラの甘い香りがする。どこの香水?」

やっぱり、男の人の部屋に入ったのは無防備だった。会社のプライベートルームとは訳が違った。ここは彼の本当のプライベートな部屋なのだ。
少し、彼の身体(からだ)から離れようと試みる。

だけど、彼は平然とした顔のまま、

「スウェーデンの『バレード』ってブランドの『ジプシーウォーター』だ。仕事のときはな。
プライベートでは『1996』を使ってる。香りがころころ変わっておもしろいんだ。
前はシャネルの『エゴイスト』だったけどな」

と教えてくれるが、わたしの背中に回されていた手の片方が腰に回って、ぐいっと彼の方へ引き寄せられてしまう。

「今度は、おれが正月におまえの家に挨拶に行く。そのときにつけていってやるから、どんな香りかわかるさ」

……えっ!? うちに来るの?

思わず目を見開いたら、

「おまえは……『ミス・ディオール』だな」

その声と一緒に、突然、彼のくちびるが降ってきた。

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