政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
将吾さんの声は低音で心地よい声だが、 今や艶やかさも加味されていた。
そんな声を耳元で囁かれ、ぞくり、としたわたしは思わず、がくん、と腰の力が抜けた。
咄嗟に、わたしの腰にまわった将吾さんの腕で、ぐっ、と支えられる。
「……彩乃」
焦れた声で、誘なうように、わたしの名を呼ぶ。
「おまえのキスが切れた……補充してくれ」
彼のカフェ・オ・レ色の瞳が、その眼差しが、あふれんばかりの艶っぽい色気を湛えて、熱を帯びた琥珀色に変わっていき、一心に、まっすぐに、わたしに注がれる。
……今まで見たことのない「男」の彼がいた。
わたしは吸い込まれるように手を伸ばし、手のひらで彼の頬を包み込んだ。
そして、さらになにかを言おうとしている、彼の声を遮って、自分のくちびるを彼のくちびるに押しつけた。