政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
W大に進学した海洋は、一人暮らしを始めると同時に、当時「彼女」だった高校生のわたしに合鍵を持たせた。
二年後、わたしが女子大に内部進学した頃には、家事など彼の身の回りの世話をあたりまえのようにするようになっていた。
子どもの頃から夢見ていた「海洋のお嫁さん」になったみたいで、本当に幸せな日々だった。
ある日、三限目の担当教授が季節はずれのインフルエンザに罹り、休講になった。
その日はその講義で終わりだったので、午後からすっぽり予定がなくなり、海洋の部屋へ行ってこまごました家事でもしましょう、と思い立った。
そして、向かった先の彼の部屋の……開けっ放しになった……いつもわたしたちが抱き合って眠っていた寝室で……
……「それ」を見たのである。
人間というのは、咄嗟には声が出ないものだ。
しかし、どのくらい時間が経ったのか皆目わからなかったが、突然、わたしの声は目覚めた。
……その声はものすごい悲鳴だった。
怪鳥が超音波を最大出力しているような、不快極まる「音」だった。
それとともに、両方の目からぼたぼたぼた…っと、涙が噴き出し始めた。
「なにか事件か!?」と近所から警察に通報される、と思ったのであろう。
海洋がベッドから飛んで出て、わたしのところへ駆け寄り抱きしめた。
怪鳥音は収まったが、痙攣を起こしたように泣きじゃくるわたしは、パニックのあまり今度は過呼吸になっていた。
大切なものを守るように、大事な壊れものを包むように、わたしを抱きしめた海洋は子守唄を歌うかのように、何度も何度も何度もくりかえした。
『……確かめたかっただけ、なんだ』
『……心はいつも、彩にある』
相手の女はいつの間にか、いなくなっていた。