政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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お昼休憩が終わる頃、島村さんが秘書室に入ってきた。

午前中はずっとこの部屋でグループ秘書の仕事を手伝っていた。島村さんの配慮だった。

「休憩中申し訳ありませんが、朝比奈さん、副社長室にお茶をお願いします」

「は…はい」

わたしはランチボックスのふたを閉めて、立ち上がった。

……また、ケンちゃんかな?

だとしたら、誓子さんとのLINEのID交換の絶好のチャンスだ。

「今日からは出社されないと思っていましたよ」

副社長室に向かう途中で、島村さんが静かに言った。

……お義父(とう)さまやお義母(かあ)さまにはなにも告げず、土曜日の夜に突然出てきてしまったからなぁ。

島村さんはわかばちゃんのお兄さんだ。
妹の恋敵のわたしを、今までどんな目で見ていたのだろう……きっと快く思っていなかったに違いないのに、わたしのためにいろんなことをしてくれていたのだ。

「旦那さまと奥さまには、あなたに少し里心がついて実家へ帰っている、ということになっています」

……とんだホームシックだことっ。

「実家には帰られていらっしゃらないようですが……今はどちらに?」

島村さんは顔を曇らせる。

「将吾さまがたいへん心配されています」

会社では必ず「副社長」と役職名で呼ぶ島村さんが、名前を挙げた。

……だれのせいだと思ってんのよっ。

わたしは無言のまま、副社長室に着いた。

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