政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「……失礼致します」

トレイにお茶とお茶菓子を乗せ、わたしは副社長の執務室に入って行った。

向かい合わせのソファにはそれぞれお客様と副社長が座っていた。わたしが、お客様の方からお茶をお出ししていると……

「……そうやってると、いっぱしの秘書だな」

と、声がかかった。

顔を上げて、お客様を確認した。
心臓が飛び出そうになる、っていうのはこういうことだ。

わたしは目を限界までめいっぱい見開いた。

漆黒の髪をサイドに流し、明らかにオーダーと思われるダークネイビーのスリーピースをピシッと着こなしたその人が、平然と座っていた。

「ど…ど…どうして……?」

そうつぶやいたくちびるが震えていた。


「この三月から、我が社の社外取締役になった、朝比奈 海洋氏だ。彼にはアメリカで培った情報システム工学を活かして、システム統括本部の抜本的な改革に携わってもらう」

将吾さん……副社長が言った。

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