政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

髪を乾かしてパウダールームを出ると、隣の部屋で物音がしている。

あわてて二つの部屋の間の扉を開けると、レジメンタルタイを緩める将吾の姿が見えた。
たった今、帰ったところみたいだ。

あんなに待ちかねていたのに、いざ、その顔を目の当たりにすると、なんだか急にこっ恥ずかしくなってきた。

「……彩乃?どうした?」

将吾が怪訝そうな顔で、こちらを見ている。
そして、つかつかと歩いてきて、わたしをぎゅっ、と抱きしめた。

……だ、ダメだ。顔が火照(ほて)ってきた。

「おまえ、顔が赤いぞ。具合でも悪いのか」

心配そうに、わたしの火照った顔を覗き込む。

「だ…大丈夫……えっと……あのね、先刻(さっき)まで、マイヤさんとfikaしてたの」

途端に、将吾がぎょっ、とした表情に変わる。

「おふくろが、なにか余計なことを言わなかったか?」

わたしは、ぶんぶんぶんと頭を振った。

「とっても楽しかったの……それでね」

将吾が、それでなんだ?という顔をする。

……いっ、言えない。

「早く……おまえにキスしたいんだけど」

将吾の顔が近づいてくる。

……このままでは、またいつもの「スキンシップ」に流されて元の木阿弥だ。それだけは避けないと。

「将吾、疲れたでしょ?早くシャワーを浴びてきなよ」

わたしは苦しまぎれに搾り出した。
もう一度、態勢の立て直しだ。

「なんだよ、今度はおまえがキスの『お預け』かよ」

将吾は子どもみたいに口を尖らせ、

「……わかったよ。その代わり、風呂から出たら、覚悟しとけよ」

という不穏な言葉を残して、バスルームへと向かった。

わたしは、全身からはぁーっとため息を吐き出した。

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