政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
将吾は烏の行水な上に、帰ってから一回もキスさせてないから、きっと速攻でバスルームから出てくるはずだ。わたしが態勢を立て直すのに与えられた時間は、僅かしかない。
考えてみれば、相手に言ってもらうように仕向けたことはあっても、自分から相手に「言葉」を言ったことはなかった。
……あの朴念仁の剣道バカですら、言ったぞ。
しかし……将吾にこんなにも惚れてしまった弱みだ。潔く、自分から言ってしまおうっ!
そう拳を握りしめたところで、わたしのスマホから軽快なリズムが流れてきた。
あわてて確かめると、実家の母親からの電話だった。
……こんな時間にかけてくるなんて、めずらしいな。
わたしは画面にタップした。