政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「もしもし……」と言いかけたところで、
『彩乃っ、たいへんなのよっ!』
母親の金切り声が飛んできた。
『しょ…松濤のおじいちゃまが……』
「し…死んだのっ!?」
うちの祖父の兄弟は三人ともまだ健在だったが、みな八十歳を越えていた。
……一番、殺しても死なないような人だったけれど、寿命には勝てなかったのね。
『なに言ってんのよっ。生きてるわよっ。それどころか、ピンピンしてるわよっ!』
……じゃあ、よかったじゃん。
すると、『おふくろ、ちょっと貸せ』という声とともに、ガチャっと雑音がして、
『……ねえちゃん、落ち着いて聞けよ』
裕太にバトンタッチされていた。
『ねえちゃんが、海洋さんと尾山台のマンションにいたことが……松濤のじいさんにバレた』