政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……金曜日の晩、鯛めしの折詰、悪かったな」
将吾さんがわたしのスマホを返しながら言う。
「あそこの料理、美味かっただろ?」
「とっても、美味しかった。ミシュランで修行した人のお店だってね。将吾さん、食べられなくて残念だな、って思って。食生活は不規則そうだし」
こんな普通の会話、将吾さんとは初めてだな、と思ったら、なんだか照れくさくなってしまって俯いた。
でも、ふと気がついて顔を上げた。
「……まさか、金曜日からずっと会社で寝泊まりしてるの?身体、大丈夫?」
将吾さんのカフェ・オ・レ色の瞳が少し見開く。
「金曜も土曜もちゃんと帰ったさ。
昨日の日曜は接待ゴルフのコンペだっただろ?
終わったあと、月曜の朝イチまでにする仕事を思い出して会社に来て済ませて、疲れたからちょっとだけ仮眠を取るつもりが、がっつり朝まで寝ちまったんだよ」
将吾さんは片方の口を上げて、ニヤリと笑った。
わたしは安堵の笑みを浮かべた。