夢現物語
若草の筝の琴が切れたのは、自然に切れた訳では無く、若草の弾き方がいけなかった。

お陰で、若草の顔には、弦が擦れて傷がついてしまった。
藤一条の姫君の御名にも、ほんの少しだけではあるが、傷がついてしまった。

「姫様。」

ぼそりと和泉に耳打ちされ、促された様に御簾の外にお出になった。

女房達が、慌ただしく働いている。
それを、姫君はぼんやりと眺めてらした。

(そうだったわ…………今日は、宴だったのよね………)

姫君が御自身の曹司に戻られた。もう、お疲れだったのだ。
< 78 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop