意地悪上司は私に夢中!?
永瀬さんは、ここは桜ヶ丘駅のすぐそばだ、と言っていた。

聞いたときはそれどころじゃなくてスルーしてしまったけど、よく考えたら恐ろしいことだ。

ドキドキしながらカーテンを開けたら、見たことのある…いや、むしろ見慣れた風景。

目を凝らせば、遠くに寂れた黄色い外壁の私のアパートが見える。

なんたる偶然。

こんなに近くに住んでるなんて、今まで気づかなかったし、考えたこともなかった。

だけど、今日に関してはこの距離はラッキーだ。

早く準備をして仕事に向かわなきゃいけないから。


10分ほどでアパートに着き、くるっと振り返った。

駅前の高層マンション。

見れば見るほど立派な佇まい。

プロジェクトリーダーともなるとあんないいところに住めちゃうの?

私は築20年のボロアパートなのに。

専門職と一般事務職の経済格差を思い知らされる。

しかも、永瀬さんの部屋は25階。

高い階層だから、それなりに値段もするに違いない。

そんなところで日々独身貴族生活を送っているなんて…

私のアパートと替えてほしい。


ドアを開ければ、永瀬さんのところとは大違いの散らかった部屋。

龍二に荷物を送る準備もしていたから汚いのは仕方ない、と自分に言い聞かせておこう。

部屋でシャワーを済ませたらますます身体が楽になって、会社にはちょうど昼休みが終わる時間にギリギリ間に合った。


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