意地悪上司は私に夢中!?
「なあ、あれ」

「え?」

永瀬さんの目線はテーブルの向こうの本棚に向いている。

上段には漫画が隙間なく並べられているけど、下段には…

『システム開発入門』
『システム開発のすべて』
『システム開発の工程』
『プログラミングとは』
『IT用語辞典』

「こんなの読んでるのか」

「あ、はい…」

恥ずかしくて顔が熱くなる。

私は一般事務職だし、アシスタントとして必要な知識は前任からの引継書でじゅうぶん足りている。

こんな専門的なものを読んだところで、意味はないし、そもそも難しくてよくわからない。

「いつか何かの役に立つかなと思ったんですけど、読んでも全然わからなくて…ダメですね」

苦笑いをしたら、ふわっと頭に永瀬さんの手が乗っかった。

頭をポンポンと撫でながら、永瀬さんは見たことがないやさしい表情で微笑む。

「お前、頑張って勉強してるんだな。えらいな」

< 35 / 123 >

この作品をシェア

pagetop