意地悪上司は私に夢中!?
ガラにもない永瀬さんの言葉に、なんだか涙が出そうになって目を逸らした。

「…やさしい永瀬さんなんて調子狂います」

「俺は基本やさしい男なんだよっ」

「本当にやさしい男は自分のことやさしいなんて言わないんですよっ」

言い合いのあと、少しだけ沈黙があって、永瀬さんはプッと吹き出した。

「いいじゃん。明日からこの調子な」

あれ?そっか。

自然にしていれば勝手にこうなるんだな。


玄関まで見送ると、靴を履いた永瀬さんは振り返った。

「俺は仕事中はいつも通りにしてる。そのスタンスは変わらない。
お前もなるべくそうしてくれ」

「はい。あんまり意識しないように頑張ります」

「いや、意識はしてほしいんだけど…」

困ったように首を傾げて、永瀬さんは、まあいいか、と呟いた。

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