何度でも恋に落ちる
翌朝、千夏が目を覚ますと優しい眼差しを向ける翼と目が合った。




「…おはよう。翼、起きるの早いね」

「うん、おはよう。ちーの寝顔見たくて早く起きたんだよ」



千夏と翼は額をくっつけると、笑った。




「そうだ、ちー。つーちゃん預かっててくれる?」

「うん。もちろん預かるよ」



千夏が頷くと、翼は千夏にシーツを巻き付けベッドから起き上がり服を着た。




「…翼?」


「腹減ったから何か買ってくるね。ちーも何かいる?」


「私、何か作るよ?」


「大丈夫だよ。ヤった後は女の人は体が疲れるっていうだろ?だからちーはまだ寝てていいよ」



翼は千夏の頭を撫でるとコンビニへと向かった。




部屋に1人になった千夏はシーツに顔を埋めると声を押し殺して泣いた。




もうすぐ、翼がいなくなると思うと悲しかった。










桜が咲き始めたばかり頃。

翼の旅立ちの日を迎えた千夏は、隼人と真弓と共に空港にいた。




「…留学か、翼も頑張るなぁ」

「隼人もちょっとは持田さんを見習いなさいよ。いつまでもフラフラしてないで」



見送りに来てまで喧嘩を始める隼人と真弓。


そんな2人を横目に千夏は翼の手を握った。




「…ちゃんとご飯食べるんだよ?夜遊びはしちゃダメだよ?」

「わかってるよ。ちーはお母さんみたいだなぁ」



翼はポンポンと千夏の頭を撫でると、便の時刻の掲示板を見上げた。




「そろそろ搭乗時間だから行くね」



腕時計で時間を確認した翼は3人を見つめる。
< 76 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop