オセロガールの計算違い3
本日の計算では、いまごろ
わたしだけを見つめながらわたしだけのために、はじめちゃんが熱唱し、
わたしは目をキラキラさせながら見つめかえしているはずだったけど、
これでいいんだわ。
これで。

激しい曲が一曲終わり、ウオーという観客の唸り声を、ダンと音がするような一瞬の暗転がかき消した。
一拍とおかずに、スポットライトが一点をさす。
そこには、いつの間にか椅子に腰かけたはじめちゃんが。

「今日はどうもありがとう」
渋い声。会場からは拍手が。
「こういうの苦手だけど、ジュンがどうしてもって言うんで、やってみたけど、楽しかった」
イケメンさんの方がこんなに話すの、初めて見た。
ただ、楽しそうには見えなかったけど。
「引き受ける時に、ジュンに交換条件を出しました」

「だから、これは俺のわがままです」

そう言うとはじめちゃんは、アンプの上からとった眼鏡をかけた。
そして、
「さとみさんのために歌います」
と言ってラブバラードを歌い出した。

眼鏡をかけたはじめちゃんは、わたしのことを見つけていたようで、
ずっとわたしを見つめてくれている。

わたしは、はじめちゃんをもっと良く見るために眼鏡をはずした。

きっと、わたしは目をキラキラさせているだろう。

はじめちゃんがわたしの計算違いを修正してくれた。

わたしは、文化祭のあとに雨後の筍のようにニョキニョキ増えそうなライバルたちのことを考えて気が遠くなりそうになったけど、

わたしたちは大丈夫だ。

はじめちゃんがはじめちゃんである限り。

END
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