あなたの溺愛から逃れたい
小学校を卒業すると、創太は私立の中学へ、私は公立の中学へ進学した。

中学生になっても創太は相変わらず私と仲良くしてくれていて、毎朝駅まで一緒に向かっていた。

時々、駅で創太の友達と会うこともあった。
すると私は毎回「創太の彼女?」と聞かれ、創太は「そうそう」なんて冗談で返すものだから、いつも否定することに必死だった。


そんなある日、学校から電車でいつも通り帰ってくると、駅で創太の姿を見つけた。
それまでも帰りのタイミングがたまに重なることはあったけど、その日いつもと違ったことは……

創太が女の子と一緒だったっていうこと。


中学生になってから創太は一気に背が伸びて、可愛らしい男の子から誰が見てもカッコいい美少年になっていた。
性格だって明るいし、誰にだって優しいし、おまけに有名高級旅館の跡取り息子だし……彼女がいた方が自然だと思った。

でも、私はその光景を目にして……胸がズキンと痛んだ。


とりあえずその場は何も見なかったことにして駅から家まで一人で帰った。
するとその道中、後ろから創太が走って私に追い付いたのを覚えてる。

今帰り? と聞いてくる創太に、私はうん、と答えた。
いつもより素っ気なく答えたのだけれど、創太は気にする様子もなく『ラッキー』なんて言ってきた。


……見て見ぬフリをしたはずなのに、『さっきの女の子、誰?』と聞いてしまったのは何故だろう。
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