その男、極上につき、厳重警戒せよ
受付は会社の顔です

 受付嬢という仕事柄、いろんな人を見る。これから足を棒にして得意先周りをするであろう営業さんや、重役出勤してくる社長や副社長。その波が通り過ぎると、今度はお客様の波がやってくる。愛想がいいのが売り、といった感じの営業さんや、堂々とした態度で威圧してくるようなお偉いさんなど多種多様だ。

その中でも、彼は明らかに極上な男だと思った。

「株式会社フェンスの深山(みやま)と申します。本日十時より、遠田(とおた)社長と約束しているのですが……」

百八十センチは超えていそうな身長を軽くかがめて、私を覗き込んでくる。
前髪がビジネスマンにしては少し長いかなとは思うけれど、彼には似合っていて印象がいい。面長の顔に、黄金比通りに配置されたパーツは、意思の強そうな二重の瞳に引き結んだ薄い唇。鼻が高いのできっと横顔も格好いいだろう。まるで、妥協を許さない芸術家の描いた絵画から抜け出してきたような相貌だ。ただ一ヶ所だけ気になることと言えば、左の眉毛に縦に一筋、毛の生えていない部分があって、まるで白い線が引かれているかのように見えること。

その一点のせいで、見ているこっちは妙に彼が印象に残ってしまう。
昔、怪我でもしたのだろうか、まるで何かに切られたみたいだけど……なんて、一瞬仕事中であることを忘れて妄想してしまうほど。


「あの……」

「すみません、深山様ですね。少々お待ちくださいませ」


思わず見とれてしまっていた。
慌てて我に返り、社長室へと内線を回す。二コールで出たのは、社長秘書の有沢花芽(ありさわ はなめ)さんだ。
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