その男、極上につき、厳重警戒せよ
*
翌朝出勤してら、私を見つけるなり、部長が近付いてきた。
「咲坂さん、何をした?」
「何がって……なんですか?」
「突然出向命令がでたんだけど」
「出向命令? 私にですか?」
「それが……」
内容を聞いて、ひっくり返るかと思った。
だってあり得ないでしょう。受付嬢が出向なんて。
だけど、部長から手渡された辞令には確かにそう書いてある。
しかも行くところがおかしい。
【株式会社フェンスへの受付補助としての出向を命ずる。期間は三日間】
しかもどうして関連会社でもないあの社長の会社に行かなきゃならないの。
いったいどういうこと。
一番慌てているのは私だけど、総務部自体がパニック状態だ。
そんなときに電話が鳴り、近くにいた部長がすぐに受話器を取った。
「はい、総務部です。……ええ。ああ、はい。今代わります」
部長は変な顔をして私のほうに受話器を向ける。
「社長秘書の有沢さんからだ」
「へ?」
なんで秘書さんから電話? と思って出ると、私の気分をさらに下げようという勢いで、不機嫌そうな声がした。
『咲坂さん? 辞令は受け取られたかしら。突然のことで驚かれていると思うんだけど、社長命令なの。懇意にしている株式会社フェンスの社長さんから、中途採用した受付の指導のために、受付経験のある女性を一人出向させてほしいと、頼まれたそうなのよ』
なによ、それ。人材派遣会社にでも頼みなよ。どうして私が。
『私が行こうかとも思ったんですけど、社長は有能な秘書にいなくなられるのは困るっていうので。あなたなら、事務経験も受付経験もあるからいいんじゃないかという推薦もあってね。……お願いできるかしら』
翌朝出勤してら、私を見つけるなり、部長が近付いてきた。
「咲坂さん、何をした?」
「何がって……なんですか?」
「突然出向命令がでたんだけど」
「出向命令? 私にですか?」
「それが……」
内容を聞いて、ひっくり返るかと思った。
だってあり得ないでしょう。受付嬢が出向なんて。
だけど、部長から手渡された辞令には確かにそう書いてある。
しかも行くところがおかしい。
【株式会社フェンスへの受付補助としての出向を命ずる。期間は三日間】
しかもどうして関連会社でもないあの社長の会社に行かなきゃならないの。
いったいどういうこと。
一番慌てているのは私だけど、総務部自体がパニック状態だ。
そんなときに電話が鳴り、近くにいた部長がすぐに受話器を取った。
「はい、総務部です。……ええ。ああ、はい。今代わります」
部長は変な顔をして私のほうに受話器を向ける。
「社長秘書の有沢さんからだ」
「へ?」
なんで秘書さんから電話? と思って出ると、私の気分をさらに下げようという勢いで、不機嫌そうな声がした。
『咲坂さん? 辞令は受け取られたかしら。突然のことで驚かれていると思うんだけど、社長命令なの。懇意にしている株式会社フェンスの社長さんから、中途採用した受付の指導のために、受付経験のある女性を一人出向させてほしいと、頼まれたそうなのよ』
なによ、それ。人材派遣会社にでも頼みなよ。どうして私が。
『私が行こうかとも思ったんですけど、社長は有能な秘書にいなくなられるのは困るっていうので。あなたなら、事務経験も受付経験もあるからいいんじゃないかという推薦もあってね。……お願いできるかしら』