その男、極上につき、厳重警戒せよ
「はあ。ですが、そういう公式な場に私みたいな男がお連れするのは、お孫さんの将来的に良くありませんよ。連れてこられるのなら、松田さんがエスコートなされては」
「いやあ、孫は君のファンのようでね。良かったらこれを機に親交を深めてもらえたら……」
やばい、と頭の中で警告の赤ランプが点滅し始めた。
どうやらこれは、孫の相手として目をつけられたということか?
「……ですが。松田さんのお孫さんならまだお若いでしょう。私はもう三十一ですし。もっと若い将来有望な男性のほうがいいですよ」
「君は将来有望だろう。それに孫は社交的なのはいいんだが、ふらふらしていてね。家族の欲目もあるんだが、なかなかの美人だ。変な男に言い寄られる前に、少し年上の、落ち着いた男性とうまくいってくれたならと私も息子も思っていてね」
「しかし……その」
「それとも、将来を約束している女性がいるのかね?」
眼鏡の奥から油断ならない視線を向けてくる松田副頭取。
そんな女性は……いない。
ただ、気になっている女性はいる。気持ちも言葉にした。けれど彼女から来たのは曖昧な返答だった。
“変わりたい。だから甘えたくない”
“一緒にいたら、好きになってしまうから”
“……今じゃないです”
今じゃないならいつなんだ。
そう問いただしたい気持ちもあったが、あえて彼女の気持ちを尊重したのは、彼女の本気を感じ取ったからだ。
だから待つと決めて、彼女の手を放した。それがもう、ふた月も前のこと。
今まで待つことを避けてきた俺にとっては、ひどく苦しい二ヵ月だった。