その男、極上につき、厳重警戒せよ


「私の目はごまかせんぞ。六十六銀行の副頭取が君に狙いをつけてるっていうじゃないか」

「……どこでそういう話仕入れるんですか、大山さん」


思わず脱力してしまう。
俺が今日聞いた話を、何故今日はずっと会社にいたはずの大山さんが知っているんだ。


「マジすか。ヘッドハンティングされてんの? 深山」


予想外の話題に、恭平は楽しそうだ。大山さんがおしぼりで彼の頭をチョンと小突く。


「馬鹿、社長を引き抜くやつがどこにいるんだ。婿殿としてだよ。実は副頭取、何度か私に深山くんのプライベートについて聞いてきていたんだよな。副頭取のお孫さん、現在二十一歳なんだそうだよ。就職させるより見込んだ男に嫁がせようって魂胆なんじゃないかな」


なるほど、そこが通じていたのか。

そういえば、大山さんは俺が独身なのを良く思っていないんだった。

『今はそうでもないが、昔は配偶者を得てようやく一人前と言われたものだ。君も社長なんだからいつまでもフラフラしてないで……』というのが、飲み会のときの大山さんの常套句だった。

辟易した顔を隠さずに無言でいたら、恭平のほうが焦ったように俺に突っかかってきた。


「孫娘の婿かよ。マジで。受けんの? お前。咲坂さんどうするんだよ」

「咲坂さんって、あの【TOUTA】の彼女かい? 深山君、彼女とそういう関係だったのか?」


驚いた大山さんに、俺は苦笑を返すしかなかった。
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