その男、極上につき、厳重警戒せよ
「いや、大山さん。彼女だって深山のこと好きだって、絶対」
恭平はそう言うけれど、たしかにふた月の間何の連絡もないんだ。
これは彼女に俺と連絡を取る気がないってことなんじゃないか?
もしかしたらもう、新しい職場で新しい出会いがあるのかも知れない。
もし彼女が過去を忘れて生きたいと願っているなら、俺のように遠田社長とつながりのある男は選ばないだろう。
自分でも驚くほどマイナス思考になっている。慣れないことをするからだ。
待っていたってなんにもいいことがない。
無駄に時間を使っただけじゃないか。
「……そうかもしれないですね。俺も前を向かなきゃダメってことか」
「そうだとも」
大山さんは、俺の背中を叩き、珍しく積極的に酒をついで励ましてくれた。
「あちゃー」
その脇で、桶川はなぜだか苦い顔をして頭を抱えていた。
ほろ酔いの頭で、その“なぜ”を追及する気にはならず、翌日、俺は松田副頭取に、二週間後のパーティのときにお孫さんをお借りしますと返事をしていた。