その男、極上につき、厳重警戒せよ



パーティ当日。副頭取も出席するということで、待ち合わせは会場のロビーでだった。


「はじめまして。松田李衣菜(りいな)です」


副頭取のお孫さんは、背の高いモデル系の美人だった。ラベンダー色の清楚なワンピース抜かりなく【Gentle】のもので、肩を覆うようにベージュのストールを巻き付けたことで少し控えめな印象を与える。本真珠のネックレスにそろいのピアス。髪は結い上げていて、二十一歳という年齢よりは大人びて見えた。


「これは美しいお嬢さんだ。はじめまして。深山貴誠です」


俺も笑顔を浮かべて応対する。背の高い彼女は会話するのに苦労しない。軽く視線を下げるとちょうど彼女の顔とぶつかる。俺の視線に怯えることもなく、李衣菜さんは笑顔を見せる。


「私は初めましてじゃないんです。以前も別のパーティでお見受けしました。私は父と出席していて。そのときから、ずっと深山さんと話してみたいって思っていたんです」


流行の色を塗った唇は、そこだけが別の生き物であるかのように動く。
ハキハキした口調の女性は嫌いじゃない。むしろ、今までに付き合ったことのある女性はそういうタイプが多かった。


「それは光栄です。では今日はお相手よろしくお願いします」


腕を差し出せば、微笑んで手を添えてくる。明らかに彼女はこういった集まりに慣れていて、エスコートを受ける側の心得がちゃんとわかっている。


< 66 / 77 >

この作品をシェア

pagetop