その男
童貞がなによ、陽子さんの好きな女たらしのバーテンダーよりよっぽどマシ。
女一人でやってくる客を片っ端から食べまくるような男のどこがいいのか美穂にはまったく理解できない。
片桐がそんな男でなくて本当に良かったと思う。
まあ、そうだったら好きになってはいないだろうが。
美穂がまだ眼鏡をかけていなかった頃、自分が女であると思い知らされたのは、生理が始まったときでも、胸が膨らんできた時でもなかった。
それは自分を見る男たちの瞳の奥にぬめりとした男の性を見つけたときだった。
ひどく傷ついた。
視線だけで躯を汚されたような、侮辱されたように感じた。