その男


「なんだぁ芽以も連れて行って欲しかったのに」

「なに言ってるの、高校生はお酒飲めないでしょ」

 呆れる美穂を横目に陽子は芽以をなだめるように話題を変えた。

「それより芽以ちゃん、白馬の王子さまに声はかけることできた?」

「まだです。てか白馬の王子さまじゃないですけどぉ」

「陽子さん、芽以は腐女子ですから」

 美穂の眼鏡はもう真っ白になっている。

「腐女子?」

「白馬の王子さまと王子さまが、いちゃいちゃ〜っ、てのに萌え〜ってなるのが腐女子です」


 美穂は左右の人差し指を絡ませながら湯の中に沈める。

 やめてくださいよぉとふてくされる芽以を陽子と美穂は笑った。
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