その男


「昨日も遅くまで仕事してたの?顔むくんでるわよ」

 曇った眼鏡をかけて湯船に浸かる美穂に陽子は美顔ローラーを差し出す。

「これ使ってみなさいよ」

「あ、ありがとうございます。そうなんです。最近前より仕事が忙しくなっちゃって。わたしチーフになったんですよ」

 美穂はローラーを受け取る。

「あら、すごいじゃない」

 よく分からないといった顔をする芽以に陽子は「偉くなったってことよ」と説明する。

「やっぱ女は仕事ですよ」

 美穂は美顔ローラーを頬に這わせ、これ効きそう!と感嘆の声をあげる。

「実はわたしも今アフィリエイトで稼いでて、そのお金でおなべバーに通ってるの」

「おなべ?」

 芽以が美穂に「おかまの反対、男を装った女ってことです」と説明する。





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