汽笛〜見果てぬ夢をもつものに〜
第一章 反抗
1982年4月

4月の房総半島は春といってもまだ朝晩は冷込む。
日中は海からくる潮騒の香と満開を迎えた桜の花が春の陽気を彩り新シーズン到来を匂わす。
そんな暖かい陽射しの中、龍二は地元の公立である美高中学校の入学式を迎えていた。

「龍二、またクラス一緒だな、よろしく頼むぜ」
教室に入るなり声を掛けてきたのは小学生時代からの悪友である水島明夫だった。
明夫は小学生からやんちゃ坊主で万引きを繰り返し繁華街にあるゲームセンターに入り浸っているような龍二とは真逆の劣等生だった。
しかし、小学校低学年から同じクラスで何故か仲が良かった。
龍二は優等生だったが兄の影響もあり煙草は12歳から吸い、明夫に煙草を教えたのは龍二だった。

「明夫、俺は小学生ん時とは違う生活を送る、教師達にとことん刃向かうから協力してくれ」
目を輝かせながら明夫は、
「マジで!?よーし、とことん刃向かっていこうぜ」
力強い明夫の言葉に龍二はほくそ笑んでいた。
「最初に生徒達ビビらせ言う通りにしてやる」龍二は心で呟いた。

入学式も終わり全員が教室に集まる僅かな空いた時間、龍二は担任教師の山田文恵から職員室に来るよう呼び出されていた。
「廣岡君、君は小学生のとき断トツの成績みたいね、そこで頼みがあるんだけど聞いてくれるかな?」
その山田の言葉は人にものを頼むという謙虚さは感じられず、そこには有無も言わせぬという響きがあり龍二は嫌悪感を抱いていた。
「はあ、何でしょう」
「実はここだけの話しなんだけど君にクラス委員長をやって欲しいの、何と言っても成績はトップだし皆を纏める力があると思うのね」
「えっ、委員長ですか」
「そう、この後クラスで各委員を決めるからそこで立候補してくれるかな?他の生徒が立候補しても私が推薦して必ず委員長になるようにするわ、だからお願い」
そう山田は言うと顔の前で手を合わせ龍二に哀願した。
「いや、そういうのはやりたくないんですが」
と言った瞬間、龍二の中で何かがスパークした。
「先生、やります、立候補しましょう」
「本当!?ありがとう!これでクラスは纏まるわ、よろしくね」
満面の笑みを浮かべる山田は心でしてやったりと思っていたが、本当にしてやったりと思っていたのは龍二だった。
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