汽笛〜見果てぬ夢をもつものに〜
そして、式典も終わり帰り支度をしていると、仲間の達也が血相を変え帰ろうとする龍二を制した。
「龍ちゃんヤベー、俺達いきなり停学だ」
「はあ、何で?」
「朝、教室で煙草を吸ったのチクられたぜ」
「…つーか、慌てんなよ、チクりで証拠の現物持っちゃいねーから」
「でもな、黒岩、山下、植田、亀野、河田、木村はゲロったぜ、んで今は職員室で正座してる」
「あのバカ共、根性ねーな…で、達也お前は?」
「一先ずしらばくれたが、浜島に龍ちゃん呼んで来てくれ、って頼まれたから戻ってきた…龍ちゃんがバックレるならこのまま帰ろうかと」
「う〜ん、バックレてもあんま意味ねーな、仕方ねーから浜島おちょくりに行くか」
「そうだな」
「ハハハハ〜」
二人は顔を見合わせ笑っていた。
この後、起こることを全く予想していなかった龍二は達也共々浜島をナメていた。
しかし…

「失礼します、一年A組の廣岡です、浜島先生が御呼び立てとのことで参上してまいりました」
龍二はわざと丁寧な言葉を使った。
「お前が廣岡か」
「いかにも、廣岡であります」
「色々出身中学から聞いたよ、お前中々面白い奴だな」
「顔がか?アハハ」
龍二と後ろに立つ達也は笑ったが、浜島は笑わず無表情だった。
「廣岡、俺を中学の時のダメ教師と一緒にするなよ」
「ケッ!教師なんてよ、俺から見りゃどいつもこいつも同じ穴のムジナだよ、浜ちゃん」
「何で分かる?」
「知りたいか?」
「別にどうでもいいが、後学の為に聞いてみたいな」
「あんたには理解できないだろうから教えねーよ」
「そうか、そりゃ残念だな」
浜島は表情一つ変えなかった。
龍二には何となくそれが不気味だった。

「ところで廣岡、お前教室で煙草吸っただろ?んでカツアゲもしただろ?今日から無期停学な」
「ありゃりゃ、何すかそれ?俺は何にもしてないぜ」
「名前は上がってるんだ、往生しろ」
「ああ、俺虐められっ子だから多分不良共の策略っすよ」
「何だ廣岡、男のくせに往生際悪いな」
「僕は弱っちい虐められっ子ですから」
「そんなリーゼントした虐められっ子おるんか?」
「ハイ、浜ちゃんの目の前にね」
龍二は不気味さを感じながらも完全にナメていた。しかし浜島は冷静だった。
< 8 / 24 >

この作品をシェア

pagetop