イジワル男子の甘い声


「あのね!柏場くん!あのね!」


話し方を覚えたばかりの子どもみたいに、目で彼の顔をしっかりと捉えながら。


「ちょっと落ち着け。こっちがおかしくなりそう」


「ううん!無理!落ち着けないよ!だってね、この3日間、どの教科も全部埋められたんだよ?!自信ないところいくつかあるけれど…それでも…こんなの私の高校生活で初めてすぎて…あの…はぁ…」


走って彼を追いかけてきたこともすっかり忘れて話し出したせいで、話しながら息切れしてしまう。


「わかったからとりあえず呼吸整えろ。酸欠で倒れられても困る。倒れられてもほっておくけど」


うっ。
ほっとくなし。


一度、ゆっくり深呼吸をしてから言われた通り息を整える。


「だから、あの、改めてお礼が言いたくて。本当にありがとうございましたっ」


「いや…」


深々と頭を下げると、上からそんな声が降ってきた。


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