イジワル男子の甘い声


「なにも…なかったです…ただ」


「─────ただ?」


ドクドクと自分の心臓がいつもより速く鳴っているのがわかる。


「ミズキ…さんって誰ですか?」


「ん?ミズキ?」


柏場のことなんでもお見通しで前から知っているノアなら、知っているんじゃないかと思った。


彼の全部。


私も知りたい。


「その人と柏場が歌を歌うことと関係しているなら、私は知りたい、です」


「双葉ちゃんは、sakuの話として聞きたいの?それとも、優作の話?」


「……っ、」


ずっと考えていた。
柏場だからsakuを聴くのをやめるとか、
sakuだから柏場がいいやつに見えるとか、

どっちも違くて。


「どっちでもない。どっちの彼も彼だと思うから。柏場優作のsakuの本当のことが知りたい」


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