イジワル男子の甘い声
「別になんともねーよ」
玄関に現れた彼女を見たとき、ノアの匂いに気づいても平気だったのに。
歌いながら横目で彼女を確認するたびに、誰にも取られたくないって思った。
俺の声だけ聴いていればいいのにって。
「俺のために泣いてんの?」
「うっ、そうですけど…?」
なんでちょっとキレた言い方なんだよ。
フッと笑いそうになるのを堪える。
いつぶりだろう。
笑いそうになる、って気持ちなんて。
「…なんで、俺のために泣いてんだよ」
「っ、それはっ…」
下を向くったって、顎を捕まえられたままじゃ限界がある。
それでも必死に顔を背けようとする彼女に、もう結構溺れかけている。