イジワル男子の甘い声
信じるのは怖いのに。
もう何度も、この瞬間はあったけど、忘れようと、消そうとしていたのに。
彼女の今の姿を見て、ちょっと嬉しいかもって思ってる自分がいる。
また裏切られたら、逃げられたら、どうするんだよ。バカを見るのは自分じゃないか。
だけど…この似合わない化粧も、少し短くなってるスカートも、第2ボタンまで開いてるブラウスも、少しでも、俺のためだとしたら?
これも多分、あの男の策略なんだろうけど。
まんまとやられてしまった。
まだ口に微かに残る、紅茶の味だって。
「…こっち向けよ、」
そう言って、ゆっくりと彼女の顎を指であげる。
せっかくの化粧だって、そんなに泣いたら意味がない。
「っ、」
「何で泣いてんの」
「うっ。ごめん。思わずお母さんたちのこと…話してしまって…柏場くんにまた嫌な思いさせた…」