好きって言って、その唇で。


「……私、男の人と付き合ったことがなくて」

「うん」


まるで小さい子供の話を聞くように、片桐さんは優しく目を細めた。


「こんなふうに、積極的に求められると……困る」


そう言って瞬きをした次の瞬間、片桐さんはほんのりと頬を紅潮させて私の手に自分の手を重ねた。


「うん。わかった」


そう言って、片桐さんはあやすように私の手をぎゅっと握りしめた。


「キスから始めようか」

「話聞いてました?」


珍しく真面目な雰囲気だったのにやはり片桐さんは片桐さん。ツッコミ代わりに思わず握られた手を払い除けてしまった。


「ショック療法が一番手っ取り早いって聞いたよ?」

「そうじゃなくて」


どこからそんな情報を得てくる。また例のタケルさんかな。


「え?それ以上のことは……ちょっと、奈々子にはまだ早いんじゃないかな?」


ふざけている様子もからかっている様子もなく困ったように笑う片桐さんを見て頭が痛くなる。


「やっぱり、あなたとは恋人になれません!」




番外編「好きなんて、言えない。」 fin.
< 24 / 24 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:29

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

冷徹王子と成り代わり花嫁契約
倉千花/著

総文字数/65,159

ファンタジー152ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
レッドフィールド王国 王族の娘のイリヤ・アシュフォードには、 血縁上、双子の妹がいた。 この国では、双子は淘汰されてしまう―― それを避けるため秘密裏に、 イリヤは庶民の元で庶民として育てられ、 妹のローズ・スカーレットは、 実の親である王族の元で育てられた。 成長したイリヤは王宮に給仕の娘として招かれ、 日々、平和に仕事に励んでいた。 しかし、 ある日突然、王子に妹の死を告げられた。 そして、王子と婚約関係にあった妹のふりをして生きるようにと命じられたのだった。 何故妹は殺されなくてはならなかったのか、 何故王子はそれを公にしないのか、 そして何故、私に妹に成り代わるように 命じたのか―― 謎に包まれたこの計画は、 一体どこからどこまで、 誰が仕組んだことなのか? 謎と愛が交錯するファンタジー、開幕。 Start:2018.0609 End:2018.1005
イジワル上司の甘い毒牙
倉千花/著

総文字数/48,065

恋愛(オフィスラブ)107ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
彼氏いない歴=年齢の冴えないOLの佐倉千枝。 目立たず無難にやり過ごすことを 目標としてきたはずが、 ひょんなことから、物腰穏やかな王子様で 次期社長候補と言われる 日高春人の裏の顔を知ってしまって……!? 「誰があんなブスと付き合うかよ」 「昼休み見たこと、内緒ね?」 どっちが本当の姿なんですか!? 2017.0913 Start 2018.0119 改題 2018.0524 End 2018.0621 誤字指摘ありがとうございます! 後々読み返して修正致しますm(__)m
凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
倉千花/著

総文字数/11,999

恋愛(その他)27ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「会いたくなったから来た。 それじゃ理由にならないか?」 暗闇の中にいた私に 手を差し伸べてくれたのは、 幼馴染の男だった。 2018.03.22

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop