不器用王子の甘い誘惑
14.意見交換会
 今日は親会社スリーピングカンパニーと我が社シープとの意見交換会だ。
 総合寝具メーカーのスリーピングカンパニーと主に枕を企画販売をするシープ。

 親会社があるとは言え、我が社で独自に企画・開発・販売を担っていた。

 そのため柔軟な商品を開発できていて、プラスに働いている面もあるとはいえ、近年は枕にこだわって高い枕を買う人も減り、厳しい経営を強いられている。

「そこで!!松田さんがシープに配属されたってわけ。
 勉強と言っているけど、完全にシープへのテコ入れだよ。」

 お昼休みの食堂で未智が分かりやすい解説をしてくれる。

「未智はさすがだね。
 私なんて同じ課で仕事してるのに全然知らなかったよ。」

 どうやら私は綺麗でサバサバした子と縁があるらしくて未智も小学生の頃からの友達の瑞稀と似てサバサバしている。
 ただ髪の毛はロングのゆるふわパーマでどんな男も虜にしちゃうところはちょっと違うかな。

「同じ課っていうか、席お隣でしょ?
 お隣!」

「……はい。そうでした。」

 たまに仕事で質問されるけど、松田さんは仕事の出来る人だとすぐ分かった。

 質問は的確で無駄がないし、直した方がいいところは例え上司だろうと指摘している。
 それを角が立たないように上手く話を纏めるんだから凄いの一言に尽きる。

「さっきのはさすがにびっくりしたけど…。
 松田さんみたいな人が紗良の探してた王子様って感じじゃない?」

「……もう王子様は探してないよ。」

 それに松田さんには想い人がいる。

「そっか。そうだったよね。ごめん。」

「ううん。私こそごめん。」

 ただの冗談なのに何を本気で返してるんだろう。
 でも本当にもう王子様はいいんだ。

 それに松田さんの片思いのお手伝いをするって決めた。
 憧れるのもおこがましいって気づいたし。

「ほら。ご飯急いで食べなきゃ。
 松田さんの勇姿を見れるなんて同じ課の特権でしょ?」

 親会社との意見交換会。

 いつもなら男性社員のしかも出来る人だねって人達が集められて出るようなもの。
 今回は趣向を変えたらしくランダムにピックアップした中に私も入っていた。

 女性社員の柔軟な意見も必要だからねと微笑む松田さんは正直素敵だと思う。

「見てるだけならタダだしね!」

 少し前向きになれて、未智と笑い合う。
 さっきのは本当にいただけないけど、見てるだけなら別物!

「そう!タダだよ!目の保養は大切。」

 目の保養。目の保養。

 タダより怖いものはないって諺がふと浮かんだけど、そんなわけないよと頭から追い出した。




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