消極的に一直線。【完】
 ついに教材室の前へと辿り着くと、彼女は「ありがとう」と跳ねて、ガラッと勢いよくドアを開けた。


「ねぇみんな! 哀咲さん、科学研究部に入ってくれたよ!」


 え、と思わずまた声を漏らすと、中にいた人達の視線がこちらに向いた。


 よくボブの子と一緒にいるのを見かけた、恰幅の良い男子と、細身の男子。そして、背の高い男子。


 恰幅の良い男子はお菓子の袋を貪りながら「おう、良かったな」と一言。


 細身の男子は、愛想のいい顔で「ようこそ」と笑った。


 背の高い男子は、一度こちらに視線を向けた後、興味がないようにすぐ逸らして、読み開いたままの本に視線を落とす。


「えーっと、まずは自己紹介かな?」


 ボブの女の子は、そう言いながら、私の腕を引いて、部室の中に引き込んだ。

 直後、まるで逃がさないとでも言うように、ガラッとドアを閉める。


「えっとまずは私ね。吉澄歌奈(よしずみうたな)。一年十組。この前は落とし物届けてくれてありがとう」


 そう言って彼女――吉澄さんは、ぴょんっと可愛らしく跳ねると、視線を恰幅の良い男子に向けた。


「あー、次オレ? 俺は西盛重太(にしもりしげた)。一年五組。よろしくな」


 彼――西盛くんは、そう言うとのっそりと立ち上がり、貪っていたお菓子の袋を目の前に差し出してきた。


 どういうことだろう。食べろってことなのかな。手を伸ばしてもいいのかな。


 恐る恐る手を袋に近付けると、スッと横から袋が引き抜かれた。


「哀咲さん、無理に食べなくて良いよ。嫌だろ、こんな汚い手で食べてるお菓子……」


 お菓子の袋を奪い取ってそう言ったのは、眼鏡をかけた細身の男子。


「おい汚い手って何だよ。ちゃんと洗ってるし」


「あ、僕は洲刈英麿(すがりひでまろ)って言います。一年七組です。どうぞよろしくね」


 西盛くんの言葉をスルーして愛想のいい笑顔を向ける細身の彼――洲刈くん。


「おい英麿、俺は汚くねーぞ」


「あまり初対面の人に食べかけのお菓子をあげるのは失礼だっていう話だよ」


 はぁ、と息を吐く洲刈くんが、取り上げた袋を西盛くんに返す。


「え、マジ?」


「うん、マジ」


 何だかこんなやりとりは初めて見るけど、仲が良いんだなぁと感じる。


「ほら、ギン。最後はギンの番だよ」


 吉澄さんが、まだ本を読み続けている男子の顔を覗き込んだ。


 彼は、あー、と興味なさげに声をだして、パタンを本を閉じる。

 切れ長の綺麗な瞳と目が合って、一瞬緊張が走った。 


「一年四組、真内銀十郎(まないぎんじゅうろう)。よろしく」


 短くて無愛想なのに、優しく響く低い声。

 なんとなく、不思議な雰囲気をまとった人だと思った。
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