消極的に一直線。【完】
第19章 溢れ出した気持ち
第19章 溢れ出した気持ち
翌日。とうとう一学期最後の日。終業式の日になった。
「おいお前ら静かに整列しろ」
太吉先生の声が、廊下の騒がしい喧騒に消える。
ざわざわとうごめく人波の間を縫って、自分の整列位置に並んだ。
「並んだら体育館移動するぞー」
昨日私は、鈴葉ちゃんと話をしに行く真内くんを止めに行くこともせず、誤解を解きに行くこともせず、ただ颯見くんの部活姿を眺めていた。
あれから真内くんはどうなったんだろうか。迷惑かかってないかな。変な誤解されてなければいいんだけど。
いろいろなことを考えているせいか、体が、なんだか重い。少し、気分も悪い。
体育館へと続く渡り廊下を、前の人に続いて進んでいく。
うだるような暑さが、汗を誘発して、気持ち悪さが増した。
「哀咲、」
後ろから名前を呼ばれて、鼓動が揺れる。
顔を振り向かせると、何人か後ろに並んでいたはずの颯見くんが、真後ろにいて、また心臓が音を鳴らした。
「しんどくなったら早めに言って」
優しい声が、気持ち悪さを拭った。
「俺、保健委員だからさ」
クシャッと笑った顔に、トクンと胸の奥が鳴って、慌てて頷いた。じゃ、と、元の整列に戻った颯見くんを見届けて私も前を向く。まだ、鼓動が訴えるように主張している。
好き。どうしてこの気持ちを抑えようとしていたんだっけ。
そんなことを思いかけて、慌ててその考えを振り落とした。
好きでいたら、迷惑をかけるからだ。釘を刺されたからだ。
そう自分を制しながら、好きでいてもいいんじゃないの?、と訴える自分がどこかにいる。
昨日のせいで、また傲慢になってしまったんだ。颯見くんが私のことを気にかけてくれていたから。今さっきも。
もしかしてまた、期待してるんだろうか。そうだとしたら、私はとことん厚かましい。甘えすぎてる。
あれ、でも、もっと甘えてって言われたことあったな。
そんなことを思って、またその傲慢な考えを振り落とした。
勝手な思考がぐるぐると回る。
暑さも相まって、やっぱり気分が悪い。のぼせたみたいに、周りの音がこもって聞こえてくる。
あれ、これは。
視界がだんだんと色をなくしていくのを感じて、もうすぐ体育館へ着くというところで足を止めた。
「あれ、哀咲さん?」
後ろの子にかけられた声も、モヤがかかったみたいに遠くに聞こえる。急に、冷や汗が全身から滲み出た。
貧血だ。どうしよう。ここで倒れて迷惑をかける前に、保健室へ行かないと。早く、先生に言わないと。
――しんどくなったら早めに言って
クシャッと笑った颯見くんの顔が脳裏に浮かんで、重い体を後ろへ向けた。
いつの間にか、また真後ろにいた颯見くんと、バチっと視線が繋がる。
「哀咲、」
「颯、見、く――」
焦ったような慌てたような颯見くんの顔が、チリチリとモザイクがかかったように見えなくなっていく。
鼓動の音だけを聞きながら、私はその場で意識を失った。
翌日。とうとう一学期最後の日。終業式の日になった。
「おいお前ら静かに整列しろ」
太吉先生の声が、廊下の騒がしい喧騒に消える。
ざわざわとうごめく人波の間を縫って、自分の整列位置に並んだ。
「並んだら体育館移動するぞー」
昨日私は、鈴葉ちゃんと話をしに行く真内くんを止めに行くこともせず、誤解を解きに行くこともせず、ただ颯見くんの部活姿を眺めていた。
あれから真内くんはどうなったんだろうか。迷惑かかってないかな。変な誤解されてなければいいんだけど。
いろいろなことを考えているせいか、体が、なんだか重い。少し、気分も悪い。
体育館へと続く渡り廊下を、前の人に続いて進んでいく。
うだるような暑さが、汗を誘発して、気持ち悪さが増した。
「哀咲、」
後ろから名前を呼ばれて、鼓動が揺れる。
顔を振り向かせると、何人か後ろに並んでいたはずの颯見くんが、真後ろにいて、また心臓が音を鳴らした。
「しんどくなったら早めに言って」
優しい声が、気持ち悪さを拭った。
「俺、保健委員だからさ」
クシャッと笑った顔に、トクンと胸の奥が鳴って、慌てて頷いた。じゃ、と、元の整列に戻った颯見くんを見届けて私も前を向く。まだ、鼓動が訴えるように主張している。
好き。どうしてこの気持ちを抑えようとしていたんだっけ。
そんなことを思いかけて、慌ててその考えを振り落とした。
好きでいたら、迷惑をかけるからだ。釘を刺されたからだ。
そう自分を制しながら、好きでいてもいいんじゃないの?、と訴える自分がどこかにいる。
昨日のせいで、また傲慢になってしまったんだ。颯見くんが私のことを気にかけてくれていたから。今さっきも。
もしかしてまた、期待してるんだろうか。そうだとしたら、私はとことん厚かましい。甘えすぎてる。
あれ、でも、もっと甘えてって言われたことあったな。
そんなことを思って、またその傲慢な考えを振り落とした。
勝手な思考がぐるぐると回る。
暑さも相まって、やっぱり気分が悪い。のぼせたみたいに、周りの音がこもって聞こえてくる。
あれ、これは。
視界がだんだんと色をなくしていくのを感じて、もうすぐ体育館へ着くというところで足を止めた。
「あれ、哀咲さん?」
後ろの子にかけられた声も、モヤがかかったみたいに遠くに聞こえる。急に、冷や汗が全身から滲み出た。
貧血だ。どうしよう。ここで倒れて迷惑をかける前に、保健室へ行かないと。早く、先生に言わないと。
――しんどくなったら早めに言って
クシャッと笑った颯見くんの顔が脳裏に浮かんで、重い体を後ろへ向けた。
いつの間にか、また真後ろにいた颯見くんと、バチっと視線が繋がる。
「哀咲、」
「颯、見、く――」
焦ったような慌てたような颯見くんの顔が、チリチリとモザイクがかかったように見えなくなっていく。
鼓動の音だけを聞きながら、私はその場で意識を失った。