消極的に一直線。【完】
「ねぇ、雫」



連鎖する思考を遮った倖子ちゃんの声が、少しだけ柔らかく聞こえた。



「嫉妬も独占欲も、みんなある。悪いことじゃないよ」



受話器の向こう側にいる倖子ちゃんの表情は見えない。



だけど、すごく優しく笑ってるような気がした。



それを想像して、奥底に必死に沈めようとしている力が緩んだ。






「誰にも渡したくないなら、自分から何か頑張ってみたら?」











「え、」



スッと入ってきた言葉に、私の中の何かが大きく揺れ動いた。



トクン、と。
緊張しているわけでもないのに、鼓動が鳴る。








「あ、風邪なのに長電話してごめん! つかこんな話病人にすることじゃないし……あたし、そろそろ切るね」



少し早口な倖子ちゃんに「あ、はい」と返事を返すと、「お大事に」と言葉が返って電話が切れた。
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