星空を見上げて

彼は女性を会社の入り口まで送っていくと
クルマに乗りこんだのを見届け社内に戻っていった

今の女性は誰?
そんなことを思っていると女子社員の声が聞こえた

「ねえ今の花井ホテルの社長令嬢でしょ?」

「うん何しに来たんだろうね」

「支社長と仲良さそうに見えたけど恋人とか?」

「まさか支社長フィアンセがいるじゃない」

「それじゃ仕事の話とか?」

「でもあの雰囲気は仕事って感じじゃないよね」

「これはひょっとして政略結婚とか?」



「貴方たち無駄口を叩いている暇があるの?さっさと仕事に戻りなさい」

女子社員たちは声の主を見ると顔を青くしてぱたぱたと職場に戻っていった
私が立ちつくしているとその女性が私に気がつき近づいてきた

「澤渡葵さん?」

「はいあの貴方は?」

「桐沢冴子といいます
新城くんとは入社以来の付き合いです」

「そうですか」

「ちょっと座らない?」

私たちは近くにあるベンチに腰かけた



「気にしないほうがいいわよ」

「え?」

「さっきの女子社員たちの言葉、あくまでも噂で真実ではないから
まわりの言葉に流されないで新城くんの言葉だけ信じて」

「桐沢さん」

「あんな顔だけの子に負けないで、じゃ」
そう言いエレベーターに乗りこんで行ってしまった

顔だけの子?

私はよろよろと立ちあがり会社をあとにした


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