aventure
桜智はひとりぼっちの部屋に帰って泣いた。

鴻との関係が良くないことはわかっていたが
鴻にも家族がいて
自分が父のことで胸を痛めた時のように
鴻の家族も自分ことを知ったら傷つくだろうと思った。

それでももう鴻と離れるには遅すぎる。

桜智は本気で鴻を愛してしまった。

どうにもならなくてただ泣くことしか出来なかった。


桜智と別れて家に帰ると
すでに鴻が帰って来ていた。

(今日はあの子と会わなかったんだな。)

波瑠はそう思いながら父に挨拶をした。

「ただいま。今日は早かったね。」

「ああ、凪が熱を出して…早めに帰った。」

「え?風邪?」

「少し扁桃腺が腫れてるらしい。」

「病院には?」

「薬の袋があったから
お母さんが連れて行ったんだろう。」

相変わらず父と母の間に会話は無い。

冷え切った家の中で凪は今日も1日ここで過ごした。

具合が悪いのに可哀想だと波瑠は辛くなった。

波瑠は凪の部屋を覗いた。

凪は寝息をたてて眠っていた。

天使みたいに綺麗な寝顔だと波瑠は思う。

その凪を傷つけたヤツが許せないと思った。

犯人は未だ捕まっておらず、
鴻も波瑠もずっと凪にまた何かあったらという不安がある。

凪を覗いていた波瑠の肩に鴻が手を置いた。

「凪は強い子だからきっと大丈夫だ。」

波瑠はただ頷いた。
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