aventure
波瑠は結美とホテルを出て
近くのラーメン屋に入った。

「ここ?」

古い屋台風のラーメン屋で結美は少しガッカリする。

「ダメ?」

波瑠が甘えるような顔で結美を見て
結美は仕方なく

「ダメじゃないよ。」

とドアを開けて中に入って行った。

久しぶりのデートで行くにはあまりにもムードの無い場所だったが
結美にとっては波瑠と一緒に食事出来るだけで本望だった。

「波瑠…本当に最近元気ないね。

なんかあったの?

先週は3回も呼び出されたし…

そういうの珍しいでしょ?」

今まで波瑠は結美に1ヶ月に1度会うか会わないかだった。

「俺とそんなに逢いたくないってこと?」

「そうじゃないけど…
最近随分頻繁だなって…」

「結美のこと思い出すとしたくなっちゃって…
ダメかな?」

結美は嬉しそうに首を振った。

「私は嬉しいけど…」

波瑠は結美を家まで送った。

女の子は決して一人で帰さない事にしてる。

自分と別れた後、凪みたいに知らない男に連れ去られたら堪らないからだ。

結美を送った帰り道、結美の家の近くで波瑠は母の翠を見た。

翠は男と一緒だった。

腕を組み、その男の顔を見て微笑んだ。

母の笑顔を見たのは何年ぶりだろうと思う。

母はまだ若く、綺麗だったが
波瑠はそんな母を許せなかった。

凪のことで身なりなんか気にする事も出来ず、
ボロボロになってくれてたらまだ許せた。

母は仕方なかったとでも言うように
昔のまま着飾り綺麗な母のままだ。

自分の浮気のせいで凪をあんな目に遭わせたくせにと波瑠は思う。

母の行動全てが気に障った。



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