aventure
波瑠はそれからも桜智をたまに呼び出した。

一緒に桜智の嫌いなホラー映画を映画館で観せられたり
苦手な激辛料理を食べに連れて行かれたりした。

桜智が嫌がることをして
まるで好きな女の子をいじめる小学生みたいだと
波瑠は自分でも情けなくなったが
どうしても手に入らない桜智を見ると許せなくなる。

今日は何をさせられるんだろうと思いながら
波瑠と待ち合わせ場所に行くと
大学の友達と卒業と就職を祝うパーティーに行くと言われた。

桜智は露出の高いドレスを着せられ
波瑠と腕を組んでクラブに連れて行かれた。

お酒を飲み踊る波瑠は周りの女子の視線を集めていた。

そして桜智も男たちの視線を浴びた。

波瑠が女の子を連れて来るのは初めてだった。

「波瑠とどういう関係?」

「ただの知り合いです。」

「嘘だー。新しい彼女でしょ?

にしても可愛いな。同じ大学だって?何年生?

専攻は何?」

「デザイン科の2年です。」

「へぇ。波瑠のヤツいつのまにこんな可愛い子と知り合ったんだよ。」

桜智が男たちに言い寄られてるのを波瑠はしばらく遠くで見ていた。

「あの子誰?」

本物の川上颯斗が波瑠に聞いた。

「可愛いだろ?

良かったらお前にやろうか?

ま、あの子は誰にも靡かないと思うけどな。」

「え?」

颯斗はそんな冗談を真に受けて桜智が一人になると
桜智に近づいた。

颯斗は自分に自信がある。

自分に靡かない女など居ないと思ってる。

「良かったら一緒にあっちで飲まない?」

「あ、いえ。」

桜智は波瑠を探したが
波瑠の姿は無かった。

「波瑠ならあっちで彼女と…」

「彼女?」

「知らなかった?波瑠には結美って言う彼女がいる。

まったく個室で何やってんだか…」

桜智は少し気が抜けて、近くにあるお酒を飲んだ。

「俺は川上颯斗。

波瑠の友達。

君のことは波瑠に頼まれてる。」

桜智はその名前を思い出し
颯斗の顔を見た。

颯斗は波瑠に負けないくらいカッコいいのだろうが
桜智には鴻に似てる波瑠のが好みだった。

でも桜智が好きなのはあくまでも鴻だ。

鴻と比べたら大学生なんてまだまだだ物足りないと思ってしまう。

「先輩が本物の川上颯斗さん?」

「何それ?」

桜智は首を横に振ると笑った。

実際に女の子を落とすことに長けてる颯斗は
若い女の子の1人くらいどうにでも出来ると思ってる。

そして桜智は颯斗に連れられカウンターでお酒を飲もうと誘われた。





< 58 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop