aventure
別離
鴻のマンションに戻った桜智は
波瑠と連絡を絶った。

波瑠は何度も桜智に逢いに来たが、
ドアは開けなかった。

しかし鴻も大口の仕事が入って
桜智になかなか逢いに行けなくなった。

桜智は鴻に逢えない寂しさを紛らわそうと
真緒と遊びに行く回数が増えた。

「オジサンとはどうなってるの?」

真緒は二人のことをあまり話題にしなかったが
最近の桜智を見てると
二人は別れたのではないかと思うほど
全く鴻の話が出ないので
聞いてみることにした。

「うん、なんかね…忙しいんだって。

そう言ってたけど…もしかしたら奥さんに遠慮してるのかも。」

真緒は桜智からどんどん笑顔が消えていってる気がした。

「桜智…本当にこのままでいいの?

自分より30も年上の奥さんのいる人なんか好きになって…桜智のこと知らない人が見たら絶対にお金目当てだと思われるし…現にあの人に頼ってるし…

奥さんも桜智の存在を知ってるし…

こんな面倒くさい恋なんてやめて
もっと幸せになれる男を見つけるべきだと思う。

お金の問題ならあの人に頼らなくても何とかなるんじゃない?

わたしはね、桜智にもっと普通の恋愛してほしい。

このままじゃ桜智がどうなるか心配だよ。

せめて息子の方ならまだよかったのに。」

桜智だってそれはわかってる。

でも波瑠だけは絶対に許されない。

たとえ波瑠を好きになっても
それはもう絶対ににあり得ない事だった。

出逢う順番が逆だったなら
桜智はもっと普通に幸せになれたかもしれないと思っていた。




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