aventure
桜智は翼のことを拒みながら
心の何処かでは新しい恋愛が
鴻や波瑠を忘れさせてくれると信じている。

翼は見た目はかっこいいし優しくしてくれる。

そんな上辺だけの翼を見て
軽い気持ちでこの人と恋愛を始めてしまおうかと迷いながら翼の隣に座っている。

「さっちゃん、また逢えるよね?」

翼が微笑んで桜智に聞いた。

桜智は少し考えて頷いた。

真緒のマンションの前まで翼に送ってもらい、
部屋に戻ると真緒はまだ帰ってなかった。

「どこ行ったんだろう?」

バッグからスマートフォンを取り出して真緒に連絡してみた。

「もしもし、桜智?

何?もう帰って来ちゃったの?」

「うん。真緒は?どこ?」

「今日は帰らないから一人でゆっくり寝て。
ベッド使っていいからね。」

「え?ちょっと真緒?どこなの?」

「じゃあねー。」

真緒は場所も言わず、電話を切ってしまった。

桜智は一人で真緒のベッドに寝転んで
さっき会った波瑠のことを考えていた。

そして鴻に会いたいと思ってしまう。

そんな気持ちを紛らわすために
冷蔵庫から缶酎ハイを出して一人で飲んだ。

酔いがまわるほど桜智は鴻が恋しくなる。

桜智は消したはずの鴻の連絡先を頭の中に記憶していて
思わず連絡してしまった。

「鴻さん…会いに来て…」

鴻は突然深夜に酔ってかけて来た桜智からの電話に一瞬は戸惑ったが
甘い声で誘う桜智を愛しいと思った。
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