図書室の花子さん(仮)
後悔の波が押し寄せる。
その波に飲まれるように、私は溜息と共に机に突っ伏した。
「あらら、振られちゃったんだ。」
悠里が冗談混じりにそう言って、伏せた私の頭をちょんちょんと撫でる。
「まだ振られてないもん。ていうか返事すら貰ってないから。」
不貞腐れつつも顔を上げる。
「名高い"図書室の花子さん"でも、相手にされないことあるんだね。」
仏頂面の私と目が合った悠里は、淡々とそんなことを言ってのけた。
そんなあだ名は、片想いの上で少しも手助けはしてくれない。"高嶺の花"だろうが"図書室の花子さん"だろうが、助っ人にはならない。今回、唯一役に立ったのは"読書オバケ"のみだ。
そして何より彼には、私自身、
"日下部 華"を見て欲しかった。
「"花子"じゃなくて、
私を見てくれないと嫌なの。」
悠里に向かって、切実にそう答える。