図書室の花子さん(仮)
「それなら、そう言えばいいじゃん。」
彼女は、そう切り返す。
「いい…だって、"怖い"って思われてるもん」
斉藤くんに近づくことで、これ以上、傷きたくない。好きだからこそ、欲張れない。
「ふーん、あんたの好きになった斉藤くんは、そうやって第一印象で人を決めつける人なんだ。」
吐き捨てるように悠里が呟いた。
その冷たいトーンと真剣な瞳に驚く。
「華はそうやって、自分が傷つくのが嫌で、いつも中途半端な距離で終わらせてるんだよ。
"高嶺の花"が嫌だと思いつつ、そうやって人と距離を保っていられることに甘えてる。
本当に距離を縮めたいなら、
自分から手を伸ばしていかなきゃ。」
諭すような口調で、彼女はそう話した。
そう、かもしれない……。
私は、今まで距離を縮めていくことを自分からしていなかった。
今回だってそう。斉藤くんは最初、自分から
"会ってみたい"と言ってくれたのに。
一度そこで逃げ出したのは、自分だ。
斉藤くんとの距離を縮めたいなら、もう自分から動く以外、チャンスはない。
悠里に向かって、決意を固めて大きく頷く。それを見た彼女は、今日一番の笑顔で私の背中を押してくれた。