極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「……手の届かない相手に泣くのなんかやめちまえって思った。二度目のハイアットのロビーでの待ち合わせの時は、さすがにきついかと思って躊躇ったのにお前は倉野さんの後をつけてっちまって。お前の落ち込み様は異様だし、なんか変だと思ったけど朝比奈さんとの関係はお前は否定するし。朝比奈さんと別れた後、ボロボロになったお前問い詰めてようやく真相聞いた時、血の気が下がったよ」
「なんで、そんなこと……」
伊崎が適当に誤魔化した”ちょっといいなと思ってる同期”が誰なのか、話の流れでは明白だ。
だけど口に出さずにはいられなかった。
伊崎は恨めしそうに私を見た後、すっかりとけたデザートのチョコサンデーにスプーンを突っ込むと小さな声でぼそりと溢す。
「……好きだったんだよ、吉住が。でも、結局これが原因で言えなくなった」
「伊崎……」
伊崎の手が、結局チョコサンデーを食べることも放棄した。
すいっとテーブルの隅に移動させ、自分の正面をあけると、額がテーブルにつくほどに頭を下げた。
「……ごめん。本当に」
いつもは見えない伊崎の頭の天辺を見ながら、不思議と怒りとかは湧かなくて、呆然と店内の騒めきの中に身を置いていた。
何も言葉のない私に伊崎が再び「ごめん」と呟いて、その時にはちょっと我に返って「もういいよ」と声が出る。
「でも、なんで三年も」
「……朝比奈さんがあっさりお前を置いて関西に行ったってのが、許せなくて。本気じゃないならこのまま時間かけて忘れてけばいいと思って」
「……それなら、言わなくてすむと思った?」
「……それも、ある」
びっくりした。
真実のことよりも、私よりもずっとデカい図体をした男が、いつも何気に偉そうに言いつつも何かと助けてくれた彼が、ずいぶんと小さく見えた。
「朝比奈さんが帰って来るなら、吉住がどうしたいのか今度こそちゃんと見て協力しようと思った」
「でも付き合ったフリしようとか言ったじゃない」
「あれは、あわよくば、っていうのと」
「……呆れた」
「と! そうしたら朝比奈さんの本心もわかるかもしれないと思ったんだよ!」