極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
それから午後はお互いに仕事をこなして、その間も時折脳内に隙間が出来れば色々なことが頭を過った。
朝比奈さんにべったりだったあの頃の自分のことだとか、必死になって追いつこうとして、靴擦れで悩まされていたことだとか。
コンプレックスになるほど憧れた、倉野さんの凛とした立ち姿だとか。
そんな私を見る、朝比奈さんの優しいけれど少し困ったような笑顔だとか。
散々泣いた、別れた日の夜のことだとか。
心配して何度も飲みに誘ってくれた伊崎のことだとか。
それらが一通り一巡した仕事終わりの頃には、私の中で色んなことが片付いてひとつの線に繋がって、すとんと胸に落ち着いていた。
「……もっと怒るかと思ったけど、随分あっさりしてるよな」
「怒って欲しいの?」
「いや、うん。殴られても仕方ないとは思ってた」
ハイアットのラウンジにあるテーブル席で、伊崎と私は向かい合わせに座る。
仕事上り、ここに直行したのは朝比奈さんの指示だった。
「怒る、というか……。結局、私がダメだったなあって色々思い出して思った」
私がもっと、しっかりしていれば何も問題はなかった。
あの頃、倉野さんに何度か遭遇して、私に囁いて行ったのもきっと偶然ではなかったんだろう。
自信の無さから術中にハマって、勝手に負かされた気分になっていた。
自信があれば、きっと朝比奈さんに真相を聞けたはずなのに出来なかった。聞いても、信じることが出来なかったかもしれない。
そんな私に遠距離恋愛など、期待できなかったのかもしれない。
きっとどこかでダメになっていた。
だから、朝比奈さんはあの日振り向くことをしなかったのじゃないだろうか。
「だから、私が別れを切り出しても何も言わなかったのかなって」
「いやいや。だからってそこは絶対納得いかねえ。ホントに好きならたとえ遠くたって手放したくないもんだろ、休みの度に会いに来るとかフォローは出来たはずだろ」
「……伊崎。結局どっちなの、今度こそ応援してくれるって言ってなかった?」
ぐっと拳を握って力説する伊崎に白い目を向ければ、またぐぐっと喉を詰まらせていた。